【東京生活④】東京が生んだ人間たち

20年近く前のことである。

私は東京の王子駅からほど近い建設現場の前を歩いていた。建設現場の車輌の入り口前には警備員らしき人物がいたようだ。

すると突然、後頭部に衝撃を受けた。

私は背後から自転車に乗ってきた通行人に殴られたのだ。こめかみから血が噴き出し、私はその場に倒れた。左の視界が自分の血で塞がれた。その時、私の耳に入ってきた言葉が今でも忘れられない。

「これ、うちじゃないよな?」

「はい。」

建設現場の関係者同士の会話である。私は物理的なの暴力の後、言葉の暴力で上から思い切り踏み潰された。

 

これが東京だと思った。

私は生まれて初めて地元を出て、東京でアパート暮らしをしていた。まだ若造だった私は何も知らなかった。世の中にこのような人間達が存在するということを。

男の顔を地面から見上げると、見覚えがあった。私は殴られる前、本屋にいたのだ。そこで立ち読みしていた時に隣にいた男だ。しかしその時何があったのかは覚えていない。気に障ることがあったのか?

 

2つの衝撃で立ち上がれなくなっていると、アベックの通行人に焦った様子で声をかけられた。

「大丈夫ですか?」

差し出されたハンカチで血を拭いながら、私は抱えられるようにして立ち上がり、アベックに付き添われて交番まで行った。

 

私は思った。東京には2種類の人間が存在する。

人を見下す人間と、人を助ける人間だ。

自身さえ良ければいい人間と、人のために動こうとする人間だ。

 

私は幸い、顔以外は怪我はしなかったが、警察官が呼んだ救急車で病院に運ばれ、こめかみを数針縫う羽目になった。

交番では被害届を書くように言われ、その通りにした。数日後、私は警察署に呼ばれた。私を殴った犯人が警察署に出頭してきたのだ。

 

男は平謝りだった。治療費は全額払うという。当たり前だ。しかも顔面を怪我しているのでコンビニのアルバイトも休んでいる。

私は若かった。男のやったことをそれで許してしまった。男の顔も見たくなかったし、法的措置をとるとなると手続きなど面倒な上、金もなかったので弁護士などにかかる費用関係もどうなるのかよく分からない。

 

男はなぜ突然切れて私を殴ったのか?建設現場スタッフからは、なぜあのような言葉が発せられたのか?

私は本当に悪い人間は世の中にいないと思っている。ではなぜあのような行動をとってしまったのだろうか。私は、東京という地が二人にあのような行動を起こさせてしまったのだ、と考える。東京にはそうさせてしまう何かがあるのだ。

醜い人間が次々と生み出されている。

他人を見下す人間。他人を貶める人間。他人を嘲る人間。他人を傷つける人間。他人を嫌う人間。他人の悪口ばかり言っている人間。自分さえよければ良いと思う人間。平気で嘘をつく人間。責任から逃れようとする人間。

だが、それは本来のあなたではない。あなたはむしろ被害者なのである。それは東京が生み出した産物なのだ。

そしてこれらの被害者は、さらなる被害者を生み出してしまう。自らを傷つけてしまう人間だ。

傷だらけのあなたは東京を棄て、離れる必要がある。

周りに期待してはいけない。東京の人間たちはあなたなど助けてくれはしない。あなたには生きる場所を選択する権利がある。そしてあなた自らが選択しなければならないのだ。

 

あなたには未来がある。そして、大切な人も。

持てる武器は、強い意志と決断力だ。

 

さあ、立ち上がろう。

 

Yasu

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